5月FOMCの結果が発表されましたね。この記事は、「FOMCで何が語られたの?」、「そもそもアメリカがおかれている現状って?」という疑問を持った方にぜひ読んでいただきたいです!
目次
現状整理
FOMCの結果を確認する前に、現在アメリカがおかれている状況を整理してみましょう。
FRBが懸念している、インフレ・雇用に着目し、以下の観点を抑えます。
- (インフレ)消費者物価指数(前年同月比)
- (インフレ)生産者物価指数(前年同月比)
- (インフレ)ISM景況感
- (インフレ)住宅価格
- (雇用)雇用統計
(インフレ)消費者物価指数(前年同月比)
4月12日に発表された3月の消費者物価指数のまとめです。
ちなみに、コアCPIは食料品やエネルギーを除いた商品とサービスの価格変動を示します。
データを確認すると、コアCPIは市場予想を下回ったものの、総合CPIは8%を超えており、インフレ圧力が強まっていることがわかります。
結果(%) | 市場予想(%) | 前月(%) | |
総合CPI | 8.5 | 8.4 | 7.9 |
コアCPI | 6.5 | 6.6 | 5.9 |
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(インフレ)生産者物価指数(前年同月比)
4月13日に発表された3月の生産者物価指数のまとめです。生産者物価指数は、生産者が財とサービスにかけたお金(≒卸売価格)の変動を示します。卸売り価格は消費者物価に転嫁されるため、生産者物価指数は消費者物価指数の先行指標と考えられています。
ちなみに、コアPPIは食料品やエネルギーを除いた商品とサービスに関する生産者の卸売価格変動を示します。
データを確認すると、コア・総合PPIともに前月を上回っており、インフレ圧力が強いことがわかります。また、PPIがCPIの先行指数であることから、来月も引き続き強いインフレを示す可能性があると言えます。
結果(%) | 市場予想(%) | 前月(%) | |
総合CPI | 11.2 | 10.6 | 10.3 |
コアCPI | 9.2 | 8.4 | 8.7 |
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(インフレ)ISM景況感指数
5/2、4に発表されたISM景況感指数のまとめです。
ISM景況感指数は、「新規受注」・「雇用」・「入荷遅延」等の項目に関して、前月と比較して改善したかどうかの総合指数となります。指数が、50を下回ると景気後退、50を上回ると景気拡大を示します。また、各項目に関する景況感を表2,3に示します。前月と比較し、±5%変化している項目に関しては、赤/青で、60%以上の項目に関しては、黄色で色を付けました。(出展:https://www.prnewswire.com/news/institute-for-supply-management/)
ISM景況感指数を確認すると、前月よりも低下しており、2020年9月程度の水準まで落ち込んでいることがわかります。しかし、依然として50は超えており、アメリカの景気はまだ強いと言えます。表2より、詳細項目を確認すると、サービス業においては新規受注が鈍化、在庫状況は現在の需要に対し依然として低いものの、改善が見られます。また、価格は依然として高く、PPIのデータとも一致します。入荷の遅延も60を超えていることから、物流の問題も依然としてあることがわかります。
また、表3より、製造業部門に関しても価格は依然として高く、入荷の遅延も60を超えており、サービス部門と同様の問題を抱えていることがわかります。一方雇用に関しては、製造業・サービス部門どちらも、十分高いものの、下落基調にあります。雇用の最大化はFRBが注目しているポイントの一つであるため、今後とも継続して確認していく必要があります。
ISM調査員曰く、製造業部門に関しては、要求依存型であり、サプライチェーンによる制約を依然として受けているそうです。労働不足の問題解決のスピードは遅く、離職率が高いそうです。また、4月はエネルギー制約により、価格拡大に拍車がかかったそうです。今後も、需要とサプライチェーン問題が引き続き課題となり、特に需要に関しては、(1)新規受注数の高止まり、(2)顧客在庫数が低いままであること、(3)受注残が増加基調にあること、生産と雇用指数から分かるように、消費水準が引き続き強いこと、から引き続き強いままであることが考えられるそうです。
コメントより考えると、アメリカ経済は引き続き強いのではないかと考えられます。FRBが強気に出られる理由の一つでしょう。
結果(%) | 市場予想(%) | 前月(%) | |
製造業 | 55.4 | 57.6 | 57.1 |
非製造業(サービス) | 57.1 | 58.5 | 58.3 |
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(インフレ)住宅価格
4/26に発表されたケース・シラー住宅価格指数のまとめです。
住宅価格は、米国の個人消費動向に大きな影響を与えると考えられており、注目されています。
データを確認すると、市場予想を上回り、住宅価格が上昇していることがわかります。住宅価格が高騰しすぎた場合、買い渋りが発生し、消費鈍化⇒景気悪化とつながる可能性があります。また、FRBの利上げにより、連鎖的に住宅ローン金利が上昇し、高い住宅価格と高い住宅ローンのダブルパンチによる住宅の買い渋りが起こる可能性もあります。
景気の動向を把握するため、今後も住宅価格の動向を注視していく必要がありますね。
結果 | 市場予想 | 前月 | |
住宅価格(前年同月比) | +20.2% | +19.0% | +18.9% |
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(雇用)雇用統計
4月度雇用統計
※記事を書いている途中ですが、5/6の雇用統計が発表されたため、更新します。
結果を確認すると、雇用者数は予想より強く、前月と同数だけ増加しました。失業率は0.1%だけ予測より増えてしまったものの、前月と同様であり、十分強い結果であることがわかります。時給は、予想通りですが、前月より0.1%下落しており、賃金インフレの上昇が続いてはいますが、ペースや方向は悪い方向に進んでいないように見えます。以上より、特に大きいサプライズはなく、FOMCでパウエル議長が明言した様に、雇用が強いことを示していると思います。この結果より、FRBは引き続き0.5%の引き締めを継続するのではないでしょうか。
4月度 | 結果 | 市場予想 | 前月 |
雇用者数 | +42.8万人 | +39.1万人 | +42.8万人 |
失業率 | 3.6% | 3.5% | 3.6% |
時給(前年同月比) | 5.5% | 5.5% | 5.6% |
3月度雇用統計
4/1に発表された雇用統計のまとめです。
雇用統計はFRBが重視する項目の一つとして注目されます。FRBは「物価の安定」と「雇用の最大化」を2大義務としています。よって、雇用統計は、「雇用の最大化」ができているか確認する重要な指標となります。
データを確認すると、雇用者数の伸びは鈍化しているものの、失業率は引き続き低下しており、引き続き雇用が強いことがわかります。また、時給も増加していることから、インフレへの圧力がかかっていることもわかります。今後も継続して時給が上昇すれば、企業のコスト増⇒販売価格増となり、よりインフレを加速させる可能性があります。
下の結果は3月度の雇用統計ですが、ISM景況感指数より雇用指数が減少していることから、4月度の雇用者数も引き続き減少する可能性があります。FRBが、十分に雇用が強いと判断すれば、引き続き景気引き締めを行うと思いますが、予想外に弱い雇用統計となった場合、景気引き締めの手綱を弱めることも考えられます。
3月度 | 結果 | 市場予想 | 前月 |
雇用者数 | +43.1万人 | +49万人 | +75万人 |
失業率 | 3.6% | 3.7% | 3.8% |
時給(前年同月比) | 5.6% | 5.5% | 5.2% |
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5月FOMCの振り返り
5/5のFOMCの結果のまとめです。
労働市場に関して:
- 労働市場は引き続き強くなっており、非常にタイト
- 失業率は約50年ぶりに3.6%と非常に低水準
- 労働市場の環境は広く改善されているが、労働需要過多になっている
- 賃金が速いペースで上昇している
インフレに関して:
- インフレは2%目標を優に上回り、コアPCEは5.2%にも及ぶ
- 需要は強く、ボトルネックとサプライチェーン制約による供給制約を受けている
- 上記混乱は予想より長く、価格圧力もモノからサービスまで広く浸透してしまっている
- ウクライナ問題によるインフレ圧力・中国ロックダウンによるサプライチェーンの混乱もある
政策に関して:
- FRBの目標は「物価の安定」と「雇用の最大化」である
- 政策金利を0.5%上昇させることに決定
- バランスシート縮小を決定(最大で国債:300億ドル/月×3か月⇒600億ドル/月。MBS:175億ドル/月×3か月⇒350億ドル/月だけ縮小。雇用と経済を見ながら縮小幅を決定)
- 次回以降のFOMCでも0.5%の利上げが適切
質疑において:
- 賃金インフレは需要と供給の不均衡によって生じており、非常に強い
- FRBの金融政策により不均衡は解消され、景気後退を防ぎつつ賃金インフレも2%程度に収まる
- 家計・ビジネスの財務状況は強く、労働市場も強いため、厳しい引き締めを行ってもソフトランディングが可能
- 政策金利の0.75%上昇は基本的に考えていない。基本は0.5%の上昇のみ想定している。しかし、状況によって0.25%に下げたり、0.75%に上げる可能性もある
以上の結果を踏まえると、図のように政策金利は0.5%上昇し、1%となりました。また、6月以降の政策金利予測は表のように、0.5%上昇が有力であり1.5%に落ち着くのではないかと予想されています。7月も引き続き0.5%上昇し、2.0%に落ち着くと予想されています。この想定レートは都度更新されるため、定期的に確認していく必要があります。
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